大学院生、ポスドクは、独立した研究者として自立していく過程にあるので、
それを援助するために色々な機会や場面を設ける。
最も基本的な考え方は、大学院生を取りあえず独立した研究者として扱うということで、それによって、独立、自律という意識をもってもらうようにする。
ここで独立した研究者というのは、研究の色々な面で、ボスや周囲から言われてからではなく、自分がイニシアティブをとって考え、行動することができる人、それを、自分の研究に対してだけではなく、他の人の研究(それらに関与し助けること、ラボの内外ともにです)や、ラボの運営などに対しても行える人、というような意味である。実際にはこれに加えて、研究費を自分で稼げることが、独立した研究者としては重要になる(我々の研究室では、学振の特別研究員などになれるよう、大学院生を援助している)。
「学部というのは学ぶところ、院というのは創るところ」という大きな感覚のシフトを、4年生からM1にかけて教える。
それと似た転回点は30歳頃。「30までは将来性で買ってもらえる、30になった途端に、実績が幅を利かせる」。ポスドクには、これに対応できるような援助を与える。
「研究室は、確立した個人が相互作用しあい、議論をしたり、共同研究をしたり、切磋琢磨するための知のインキュベータである」、という考えのもとに、研究室を運営する。これを私達は、「Interdependency of Independent Researchers」と呼んでいる。これと、(3)の「研究室は、元気をあげたりもらったりする場所」の2つで、情と知のセットになっている。
このような考え方がどの程度徹底し、どの程度成功を収めるかは、実は、在籍する教官、研究者、大学院生の質/気質によって常に変動している。しかし、これは研究室にとっては非常に重要な概念で、この考えに沿った研究室運営ができるように、私(楠見)はいつも努力しているつもり。
科学は国際ビジネス(International Business)である。したがって、大学院生の時から、海外の学会でどんどん発表してもらう(そういう風にしているので、私達の研究室では、大学院生、ポスドクの人たちが、海外の大きな学会や重要なシンポジウムのシンポジストとして招待されることは珍しくない)。
また、そのような機会が生かせるような教育にも力を入れる。具体的には以下のようなプログラムを実施する。
1年から1年半毎に、国際細胞膜研究フォーラム(International Forum for Membrane Research) を主催する。これは名大医学部の曽我部正博先生、臼倉治郎先生との共同事業。外国から、4-16人程度(どれくらいのお金が集められるかで人数は変わる)の研究者を約1週間招待し、シンポジウムをおこなう。また、フォーラムを、外国のシンポジウムで発表したり、ポスターセッションで発表したりする練習を、ストレスがより少ない状況下でおこなう機会とする。7-2で書いたように、個人的な交流も重視している。これらの機会に知り合った研究者に認められ、海外での発表やポスドクとしての職につながったり、数ヶ月の訪問研究、より短期のセミナーのための訪問などにつながったりすることが日常的に起こるようにする。
院生、ポスドクの諸君はこれらの機会を積極的に生かすことが求められています。